平成14年度 調査研究
「青森県下における産業保健活動に関する実態調査」の結果

青森産業保健推進センター相談員 中路 重之

 青森産業保健推進センターは全国43番目の産業保健推進センターとして平成14年6月5日に開所しました。開所半年に当り、本年2月に当センターでは全県の事業場、産業医の皆さんを対象に産業保健実態調査を行ないました。その目的は、青森県の産業医学の実情を把握することにあり、事業場、産業医の皆さんの活動状況、抱えておられる問題点を把握することにありました。その結果50%を超える回収率と率直なご回答、ご意見をいただくことができました。紙面をお借りしまして厚く御礼申し上げます。また以下にその概要を述べさせていただきます。

■調査方法
平成15年1月末日時点で青森県医師会に産業医登録をしている医師436人と、同時点で青森産業保健推進センターが把握していた「青森県下事業場リスト」に掲載されていた従業員50人以上の事業場1,177ヵ所を調査対象としました。同年2月上旬に調査票を郵送し、同封した返信用封筒にて返送を依頼しました。調査票の質問事項は、活動状況、課題・問題点、青森産業保健推進センターの認知度、要望などが含まれていました。

■調査結果
有効回答率は57%、事業場53%でした。

1.産業医が重点的に実施している活動は、「健康診断の事後措置」(約70%)、「健康相談」(約50%)がほとんどで、「健康・衛生教育」が次ぎましたが20%くらいでした。困っていることは、「時間的余裕がない」(約40%)、「従業員・衛生管理者・事業主の意識が低い」(約35%)等でした。課題としては、「生活習慣病対策」(約50%)がもっとも多く、「メンタルヘルス」、「健康保持増進対策」、「腰痛等の作業態様による健康障害」、「快適職場づくり」がそれに次ぎました。

困っていること(産業医)

2.事業場で重点的に実施している業務は、「健康診断の事後措置」(約70%)が圧倒的に多く、「快適職場づくり」、「健康・衛生教育」が次ぎましたが20%くらいでした。現時点での課題は、「生活習慣病対策」(約50%)がもっとも多く、「腰痛等の作業態様による健康障害」、「快適職場づくり」がそれに次ぎましたが事業場規模が小さいほど高い割合でした(事業場規模300人以上で各々17%、23%、100人未満で31%、33%)。困っていることは、「従業員の関心が低い」(約45%)、「担当職員の研修が不十分」(約25%)等でした。以上のように安全衛生活動の水準や課題は、事業場規模によって異なっていることも示され、今後、こうした違いを考慮して現場の要求により合致した取り組みを進めていく必要があると考えられました。
重点的に実施している業務

3.青森産業保健推進センターの存在については、産業医で約80%、事業場では約45%に知られていましたが、その事業内容については十分に周知されておらず、「パンフレット配布」、「ホームページ充実」を通じて事業内容開示の要求が多く回答されました。
また、センターに希望する事業として「講師派遣」、「産業保健に関する情報提供」、「マニュアル作成」が挙げられ、事業場に対する情報センターあるいは支援センターとしての役割が求められていました。

産業保健推進センターの認知度

産業保健推進センターの支援サービスに対する希望

以上より、青森県の各事業場、産業医の現状として、「健康診断」と三つの疾病・健康障害対策(生活習慣病、腰痛症等、メンタルヘルス)が共通の主業務であり、その充実が産業医、事業場に共通した課題であることが明らかになりました。したがって当センターでは、これらに対する専門家の派遣、マニュアル配布等を通じて各事業場の要望に応えていくことが必要と考えられます。特にメンタルヘルスの専門家は本県には少なく、弘前大学医学部、各自治体病院の協力を得る必要性があります。
また、「産業医に時間的余裕がない」、「事業主、従業員の産業衛生に対する意識が低い」が基本的問題点として明らかになりました。前者に対しては産業医養成のための宣伝等の活動が必要であり、後者に関しては、専門家の派遣、マニュアル配布等を通じての啓蒙活動が必要と考えられました。いずれも当センターの今後の重要な業務です。
もうひとつの問題点は、各事業場、産業医ともに現時点で「健康診断」、「健康相談」を一歩踏みだした疾病予防という業務まで意識が向いていなかったことです。すなわち、どのようにすれば当該事業場で生活習慣病、腰痛症を予防できるか、どのようにすれば精神的に快適な毎日を過ごすことができるのか、など包括的に踏み込んだ予防医学的取り組みはあまりされていないようでした。このような取り組みには、産業医の積極的な関与と関係者全員の産業衛生に対する意識の向上が不可欠であり、当センターの最終的な目標もそこにあると考えれられました。上述の対策をひとつひとつ着実に実行していくことが目標達成に不可欠であると考えます。
以上が調査概要です。ご多忙の中、煩雑なアンケート調査に快くご協力いただきました皆さんには、再度厚く御礼申し上げますと同時に、本調査結果を今後の当センターの活動に活用させていただくことをお誓い申し上げます。最後になりましたが当センターに対する皆さんの今後より一層のご鞭撻とご協力をお願い申し上げます。